「これも運命(さだめ)なのか...。」
−第36回日本アイスホッケーリーグ、クレインズの戦いを総括する−

 今季、リーグ加盟28年目にして「規定総当たり試合数の範囲内で6チーム中トップの成績」を収めた日本製紙クレインズ。しかし、プレーオフセミファイナルでは、今季4位で、対戦成績も6勝2敗と大きく勝ち越していたコクドに連敗してしまい、ファイナル進出の夢はまたしても打ち砕かれた。

 日本リーグにプレーオフ制度が導入されたのは第25回リーグからで、今季まで実に12回ものプレーオフが実施された。上位3チーム、上位2チーム、前/後期制による各期優勝チーム同士...。数々の参加資格の変遷を経て、ここ数年は上位4チームによるプレーオフが定着化している。
 クレインズがプレーオフに初めて「参加」できたのは、皆さんご存じの通り、第33回リーグのこと。その時、クレインズはレギュラーリーグを4位で通過。1位通過したコクドとセミファイナルを戦ったのだが、下馬評を覆すクレインズの2連勝でコクドが「本気」になり、そこから3連敗をくらって敗退。最終順位も4位となる。
 第34回リーグでは、レギュラーリーグ最終戦までもつれこんだ王子との3位争いを制し、3位で通過。2位通過した西武とセミファイナルを戦った。拮抗、やや西武有利かと言われたセミファイナルだったが、これも第5戦までもつれる熱戦の末、またもや2勝3敗で敗退。最終順位は3位となる。
 第35回リーグでも、レギュラーリーグ、ラス前と最終戦まで雪印、王子、クレインズが2位争いでもつれたものの、クレインズがバックスに延長負けを喫し、2位王子とは勝ち点2、3位雪印とは勝ち点1の差で4位で通過。またもやセミファイナルで1位通過したコクドと対戦するも、3年前の再来成らず屈辱の3連敗。
 そして、第36回リーグ。今年のクレインズは序盤から上位をひた走った。コクドが8連敗でつまずく。首位だった王子も連敗でズルズル後退。結局、連敗を2で止めていた西武とクレインズが2001年終了段階で1位、2位となり3位以下を突き放す。「プレーオフは釧路から」を実現するには、2位以上にならねばならないという目標が現実味を帯びてきた。2002年に入ってからの14試合を12勝2敗のハイペースで押し切ると、最大連敗が2だった西武も遂に3連敗を喫し首位奪還。集結の東伏見で連勝することが絶対条件だったが、それも見事にクリアし、ついに1位通過を果たし、プレーオフを釧路から始めることができた。そして、セミファイナルの相手は4位通過のコクド。4年前と逆の立場になったクレインズ。でも...。

 なんとクレインズがプレーオフに出場した4回全てにおいて、クレインズに勝ったチームがことごとくプレーオフファイナルを制し優勝の栄冠を勝ち取っている。

 どうも、クレインズはプレーオフに嫌われている。今季がそれを最も象徴したシーズンだっただけにその思いが一層深まる。古くは、初めてプレーオフ制度が導入された第25回リーグ。3位になっておきながら、「1位チームとの勝ち点差10以内」という参加規定に勝ち点1足らずでプレーオフ出場を逃している。その後、上位3チームは無条件でプレーオフに進出できるようになった時には、クレインズ(十條)は再び低迷期に入ってしまう。それから苦節8年。ようやくプレーオフに出場できた。しかし、今季で4年連続プレーオフに進出しておきながら、どうしてもファイナルには進めない。確かに試練は必要かも知れないが、ここまで不遇なチームも近年珍しい。でも、あっさり勝ち進んでしまうよりも、何度も何度も壁にぶつかってしまう「不器用さ」が十條時代から抜けていない(ただ、壁のレベル自体は遙かに高くなったが...)。

 確かに優勝はできなかった、ファイナルに進めなかったのは悔しい。それは誰しもが思っていることだろう。正直言うと、1位抜けしても勝てないのか?、という憤りすら覚える。しかし、「レギュラーリーグ1位」は私が十條を追い続け始めてから、ずっと思い描いていた「夢」。それが現実のものとなったことに対しては正直言って嬉しい。「たら、れば」は禁句だが、プレーオフ制度が無ければクレインズは「優勝」なのだから。
 と、ここまでは誰しもが考える話だ。

 セミファイナル第2戦の観戦記にも書いたのだが、クレインズは「絶対に勝たねばならない試合」にことごとく負けてしまう、と。そして、その前には必ずコクドが立ちはだかっているということも偶然だとは思えない。第24回リーグ後に行われた全日本選手権。クレインズ(十條)は、始めて決勝に進出し、初のタイトル奪取に一番近いところまで行ったことがある。しかし、その時の決勝の相手がコクド(国土計画)だった。結果は2−4で点差こそつかなかったものの、内容的には完敗。これ以降、全日本選手権におけるクレインズの最高順位は3位止まりとなってしまう。トーナメント形式、予選ABプール形式のいずれにおいても、どこかの段階でコクドに当たり、ことごとく破れ、上位進出を阻まれている。おそらくクレインズは全日本でコクドに勝ったことは無いのでは?。記憶に新しいところでは、昨年と今年の全日本選手権。いずれも準決勝でコクドと当たり敗退...。

 「短期決戦を勝つための集中力。そして勝ちへの異常なまでの拘り」...。
 クレインズが全日本選手権で優勝できるようになれば、日本リーグを制する日も近づくのだろうか。ただ、はっきり言えることは、必ず越えなければならない「コクドの壁」...。

 クレインズに足りないものは何なのか?。コクドとどこが違うのか?。
 今季、リーグ最多得点、最小失点。全チームに対して得失点差がプラス。ゴーリーの防御率はリーグNo.1。パワープレー決定率も30%超。得点王+ポイント王、アシスト王、そして新人ポイント記録を更新し、完全にアレン・コンロイの抜けた穴を見事に埋めたルーキーを擁するFWラインと日本を代表するDF。「ボード際の魔術師」とまで言わしめた最高のチェッキングライン。若いウィングを生かす熱い男。快足、トリッキープレーで見せ場を作る若きウィング。ライバル兄弟ウィング。パワープレーには欠かせない安定感を増したセンター。守備はもとより、攻撃にも凄みを見せたDF。ルーキーながら堅実な守りを見せたDF。そして「押忍・男!」。いつでも行けるぜバックアップゴーリー!。そそて、日本一優しいコーチとチームの知恵袋。選手の体を気遣い倒れた選手に一目散に駆け寄るトレーナー。ファンを大事にしてくれるマネージャー。そして、ベンチだけでなくリンクをも盛り上げる通訳。「7人目のプレイヤー」である丹頂アイスアリーナのゴール裏強力サポーター。そして、そして、4年連続プレーオフの舞台に我々を「招待」してくれた指揮官...。

 これだけの布陣を持ってしてもコクドに勝てない。何故だ、何故なんだ。

 と、いうような話も、やっぱりみんな判っている話だと思う。でも、それがなかなか成就しない「不器用なクレインズ」も心のどこかで好きになっているんだよなぁ。だからこそ、どんな試合でも、クレインズが勝った試合を観れたときの喜びっていっつも大きいんだなぁ。だから、私はクレインズを追いつづけるんだろうな。

 なんか、どこかで同じような事を書いている気がするのだが...。

 まだまだ、「夢の途中」...(最後はとある文句をパクちゃったな)。