(0)プレリュード(今回はかなり長い)
既に結果はご承知の通り。本来ならば、今これを書いている時間には、丹頂アリーナに居る予定だったはずで、クレインズファンの誰もが、それを希望していたことは間違い無い。しかし...、私は今、釧路空港で東京行きの飛行機を待っているところであり、最終的にこの観戦記が仕上がるのは、自宅に戻ってからになるだろう。
前回のプレーオフは3戦のうち2戦しか観戦できず、しかも3連敗した最後の試合を見せられ、怒りのあまり観戦記を書くことを自分自身で放棄してしまった。しかし、今回は違う。今回は自分にとって観戦記として残しておくことが必要な試合だと感じてやまない。諸事情があって取り掛かった時間が遅くなってしまったが、どうしても自分の記憶を文にして残しておきたかったのだ。
セミファイナルの相手がコクドに決まったのはレギュラーリーグ最終日で、クレインズが1位を決めた日にあたる。そこで勝利を確認した時に、これまで記さなかったが、「クレインズにとって越えなければならない試練」があることを心の中では感じていた。今季、レギュラーリーグではコクド相手に6勝2敗と初めて勝ち越す。しかも、ホームゲームである4試合は全勝。ということは、「釧路でクレインズはコクドに一度も負けていない(3戦3勝)」。しかし、プレーオフに限定すると、実はコクドに6連敗中(2勝)。しかも、「釧路では一度も勝っていない」(一昨年の対西武との成績を入れても、釧路では1勝3敗)。
これは過去のデータでしか過ぎない。しかし、今はプレーオフなのだ。ご存知の通り、プレーオフはレギュラーリーグの成績はゼロリセットされる。いかにレギュラーリーグでコクドに4つも勝ち越していても、クレインズに与えられる「特典」は「全3戦を釧路でできること」「ホームアドバンテージがあること」だけであり、先に3点もらえるとか、上位チームは1勝すれば良い、とかいうものではないことは周知の事実。優勝を目指すには「目の前に居るコクドに(いかなる形でも)2度勝つこと」しか無いのだ。
私自身は過去3度のプレーオフを、「クレインズはファイナルに進出する可能性は無いとは言えないが、優勝する資格は無い」と思っていた。勿論、目前の試合で勝利を願わないバカは居ないが...。私は、拘ってきたものがある。「プレーオフを制するチーム(優勝するってことだけど)は少なくてもレギュラーリーグで1位になっているか、或いは、1位に準ずるだけの成績を残したチームでなければならない」と。だから、過去3度のプレーオフは負けるべくして負けたのである。しかし、今回は違う。少なくとも私が考える「真の勝利者」になるべき資格である、レギュラーリーグ1位をやってのけているのだ。一番多く勝ち星を重ね(西武と同数だが)、一番多く勝ち点を獲得したチームになったのだ。あとは短期決戦であるプレーオフを制すること。分の悪いプレーオフで勝つこと。それが新たなる「試練」であり、それを乗り越えてこそ「真の勝利者」として称えられるのだ。
Wie ein Held zum Siegen!
全てはここに集約される。
会場は予想通り「人、人、人」で埋まる。試合開始直前には「まっくろ」になった。3年前も「まっくろ」にはなったが、極一部が真っ白になった。しかし、今回は違う。「まっくる」が時として「ブルー」に何度も何度も変わる。それは、クレインズ側の至る所に広まる。そして、声援の「圧力」。明らかにレギュラーリーグの時よりもその「圧力」に凄みが増しており、確実に私のお腹を揺さぶる。そして、その「圧力」は試合が終わるまで落ちることは無かった。誰しもが、クレインズの勝利、クレインズの優勝を後押ししようとしている。「ようやく釧路もここまで来たか」と、その渦の中で必死に声を出す。
【クレインズ】
33−41
18−20−32−22−7
10−92−24−3−34
14−27−96−2−23
13− −19−77
(勇の出場は無し)
【コクド】
1−44
24−71−12−7−39
75−30−41−37−9
18−16−34−5−11
14−17 −3
【レフェリー】近村正輝
【ラインズマン】川口、長尾
(1)第2ピリオド
スターターはコクド1つ目に対して、クレインズはチェッキングライン13−27−19で応戦。確か、初戦では記録を見る限り、コクド1つ目に対して、クレインズは3つ目を合わせていたが、中盤から終盤に曲者揃いの2つ目を止めることが出来なかった反省か、コクド2つ目に対してクレインズは「決めるセット」である1つ目を当てる。そうでもしない、このラインは止められないとの判断か。そして、コクド3つ目には2つ目が対峙する。時として、3つ目を13−27−19にする。しかし、立ち上がりからその効果が現れない。というより、コクドがクレインズ陣内にパックを放り込むとウィングの早い寄せからパックを先に奪い、クレインズ陣内でパックを持たれる状況に。それでも、DF陣がゴール前で必死にコクドの攻めを交わすと、今度は反転速攻、クレインズのチャンス...、という「絵」にならない。DFからの球出しが遅く、至る所でパスカットを許し、場内騒然。ようやく敵陣に攻めあがっていってもニュートラルゾーンをしっかり支配され、辛うじて敵陣に入るものの、そこでもコクドの早い寄せに手を焼き優位に試合が運べない。このまま、今日もコクドが押し切ってしまうのか?、と思われた7分過ぎ、試合は意外な形で動く。
またもや、自陣からパックを出したものの、既にコクドDFがブルーライン上で待ち構えている状態でスピードを生かしてそこえを突破するには、ニュートラルゾーンでパスを2つ3つ回してギャップを作りたいところだが、それもまま成らなかった。それでは、とばかりに「強引」にコクドDFがブルーライン上ベンチサイドボード際を抜けていこうとする竹内に襲い掛かる。しかし、ここは竹内が競り勝ち、パックをコク陣内へ入れる。一旦、コクドにパックが渡るも、再び奪い返すとダーシが持ち前のキープ力とスピードでコクドプレーヤーをゴール左(K1から見て)後方まで引きつける。と、ここでゴール左のフェイスオフサークル内よりミドルレンジに居た雅俊へのマークが一瞬甘くなる。その雅俊にダーシがパックをゆだねると、
7:18 ワンチャンスを生かし今日も先制! G18←20
このシーン、シーズン中には何度もお目にかかったダーシ−雅俊のホットラインが見事に嵌る。パスを受けた雅俊、即座にフォーカスを定め放ったシュートはK1の左(右?)肩口を抜きゴールネットを綺麗に揺らした。一昨日の敗戦のショックを感じさせない(感じさせるようでは、試合にならない)幸先の良いスタートを切ったクレインズ。勿論、場内は「まっくろ」から「青い波」が生まれてくる。そして、それに見合うだけの歓声、拍手。
しかしクレインズのちょっとしたDF陣のミスからにピンチを招く。
7:49 C7 Highsticking
クレインズゴール裏左後方に流れたルーズパックを処理しに行ったジョーだったが、やはりコクドFW陣の寄せが早く、追い抜かれてしまう。それを後方からスティックでチェックに行ってしまう事自体問題だが、出したスティックが顔に入ってしまう。スティックが高いのはいけない。結局、スティックが顔に入ったら「無過失責任」により退場。
試合の均衡が破れると、おのおののチームにその後の短期的な目標が自然に与えられる。リードしたチームは「今、奪った1点を守る」こともできるし、「勝利を早く確実なものにするために、追加点を奪おうと更に攻める」という2つの「選択肢」が用意されている。しかし、リードされたチームは「追いつくこと」しか選択肢が無い。5人対5人の場面ならいざ知らず、このキルプレーの状況でだけは「守る」方が重要。というわけで、コクドがクレインズ陣内でゴールを狙おうとパスを回し、シュートを放つ。そのリバウンドを処理するのはクレインズなのだが、ここにコクドの早い寄せが入りクレインズから容赦なくパックを奪うと、最後はゴール正面のDFからシュートが打たれる。勿論、ゴール前を固めているクレインズだったが、ゴール両脇が若干甘かった。そこを察知したか、DFからシュートを打たず、ゴール左に居たFWにパス。そこからパーサイドに素早くパスが通ると、
9:05 またこいつらか G75←41←37
鮮やかにK75がゴール前でチョコンとパスされたパックを上げ、ロブの右脇(?)を抜かれる。そのあまりの鮮やかな「仕上げ」にまたもや「溜息」。どうしてもこのラインを止められないのか?。
9:18 K39 Charging
しかし、コクドもこの均衡状態はお好きではないようだ。いかにも助走つけて狙いをすましボードに向って後方から当たりに行く。今度は、クレインズが「突き放し」にかかる。しかし、コクドにカウンターを取られ2−1隊形。賢吾が必至に戻ってスライディングでパスカットする始末。PP1つ目のセットがうまく機能しないまま、PP2つ目のセットに引き継がれる。PPは終了したが、山野、腰越が必死に粘ると、最後は腰越がビハインド・ザ・ネットから、ゴール右のミドルレンジに入ってきた山野にパス。山野、迷わずシュート。
11:23 勝ち越す G10←92
これまた肩口を抜いたか?、すかさず引き離し、またもや場内が「青く」なり再び活気ずく。
11:53 K5 Interference
すっかり勢いに乗ったクレインズ。今、決めたばかりの山野がパックキープしながら敵陣深く突っ込む。呼応した腰越がゴール前で倒される。これはもしかすると「風」が来たのか?。ここで追加点を奪って優位に立ちたい。それは選手だけでなく、応援している方も同じ。クレインズはPPが得意だから、それを期待するのは当然のこと。ジョーがニュートラルゾーンから攻め入ると、相手の守備陣系をうかがいながらシュートを狙うも、無理とわかると、パーサイドのダーシにD−Dパスのような感じでパス。ダーシは相手ボックスとの間に距離があるのを確認すると、ミドルレンジへ忍び寄り、コクドのプレイヤーが突っ込みたくても突っ込めないような微妙な距離に持っていく。ゴール右45度といったところ。ダーシ得意のアングルから振りかぶると、
12:27 突き放す PPGのお返しだ! G20←7
これまた肩口を抜いたか?。あの角度ならば、K1の左肩口をかすめ、ゴール枠の左上スミに決まったとしか思えない。いずれにせよ、あっと言う間に2点を挙げ突き放す。初戦の試合展開をなぞりつつある。
12:51 C3 Highsticking/K75 Interference
これはニュートラルゾーンで賢吾の突進をK75が抑えに行ったところに両者激突。無事だったのはK75。賢吾は倒れこんでしばらく起き上がれない。色めき立つベンチ、そしてスタンド。賢吾コールでようやく立ち上がる。しかし、ベンチには戻れず反省部屋へ連れて行かれる。賢吾もハイスティックで対抗したようだ。
その後の4on4の展開では、ダーシ−雅俊のホットラインがコクドゴールを何度も脅かすも、ここで4点目を献上してしまっては、さすがにマズイとK1が好セーブを見せ、追加点をクレインズに許さない。
しかし、この「風」も15分を過ぎると、パッタリと止む。初戦で致命的な失点を許した「魔の時間帯」にやってきた。別に意識する必要も無いと思うのだが、何故か、コクドの動きがクレインズ陣内で幅を利かせ始める。立ち上がりに見せた、早い潰し、1対1の競り合いをことごとく制すると、クレインズ守備陣がズタズタにされる。しかし、初戦の二の舞は踏まぬと踏ん張り、1ピリを最小失点の1になんとか抑えた。
Shots on Goasl:C8、K10
まだ、2点差では心もとない。それは初戦
(2)第2ピリオド
スターターは1ピリと同じ。立ち上がりから、辻、中村がお得意の「ボードプレイ(ってなんだ怪しいな)」を見せるも、パックを奪われると攻めから守りへの転換に失敗。K12が抜けノーマーク。心配していたことが早々に現実になってしまうのか、と思いきやさすがにロブもここは好セーブを見せ失点を許さない。すると、負けじと反転攻撃に移ると、ダーシが入った混成セットでコクド陣内を攻める。そんな攻めと守りの繰り返しの中、やはりこのセットには打つ手が無いのか、ゴール裏をあれよあれよと回られロブがゴール右に寄ってしまう。そこでパックを抑えきれず、何故か、クレインズプレイヤーはゴール右に固まってしまい、こぼれたパックを真っ先に触りにいかねばならないプレイヤーが遥か遠くになってしまっては...。
2:14 またこいつらか G75←30
逆サイドから入ってきたK75がオープンネットにパックを流す。ロブ、飛びつくも及ばず...。盛り上がった応援ボルテージが一気に下がる。「また初戦の二の舞を喰らうのか」。そんな空気が流れる。しかし、それを吹き飛ばすのはゴール裏の応援。まだまだ負けてない。
2:53 K16 Slashing
また引き離せるチャンスが来た。また突き放せばいいんだ。C32を中心としたファンネルでダーシ−雅俊へパスが通るも、ここが流れを左右する時だと感じているのだろう、K1の脚が伸び、ゴール右スミにも蟻の子一匹入れない堅守に阻まれPPをものにできず。これがクレインズに重荷となって跳ね返ってくる。
しばらく膠着していたものの、コクドの動きは全体通して躍動的だ。どうしてもクレインズは守勢に回らざるを得ない。それなら、それで何分間か受けい回ってコクドの「風」を一時凌ぐこともリードしているチームは選択肢としてあるはずなのに、中途半端に敵陣に持ち込んだパックを「仕上げ」ないで帰ってくると、コクドの思うツボになる。ここぞとばかり反転速攻からニュートラルゾ−ンを斜めに横切るワンパスでDFが1人だけにされてしまうと、2−1隊形。しかもDFが高い位置での2−1隊形になったため、ゴール右サイドにパスが出された時点で、ロブはシュートコースを消そうとシューターに対峙し前に出るが、
8:18 甘い G34←5
前に出たロブのおそらく股間を抜けていったものと思われるが、これはパスを受けたK34がロブのポジションと態勢を瞬時に把握できたため、ロブが前に出ても防ぎようが無かったと思う(フェイント入れられ巻かれてパックを流し込まれるだけ)。それにしても、簡単に数的優位を与えてしまい、またもや初戦と同じ展開に空気は重くなる。
9:09 K7 Holding
しかし、流れを変えるべく辻がコクド陣内でパックをキープしゴール前に切り込もうとする。そこで、K7のチェックをうまく交わし、ゴール正面ミドルレンジまで来た。あとは、シュートだけ、というところで倒される。しかし、折角取ってきたPPを生かせない。前半はコクドのカウンターに苦しめられるクレインズ。いつもならカウンターにならないはずなのに、どうしてもDFが一人置いて行かれる。2人戻っても、自陣での競り合いには全く分が無く、ことごとくコクドに奪われてはゴール前へ切り込まれる。それでも必死に凌ぐクレインズ。そう、今は均衡状態。ここはじっと我慢する時だ。必ず寄せては返す波のごとくクレインズにもチャンスはやってくる。
13:53 K75 Interference
全般的にコクドのチェックはハードだ。それは今日に始まったわけではない。しかし、これはプレーオフ。「勝たねば明日はない」試合なのだ。そういう試合でのコクドのチェックは特に厳しい。それはずっと前からわかっているはず。しかし、ナイスチェックと反則は紙一重。またもや転がり込んで来たPP。今度こそ勝ち越す。クレインズならできるはずだ。その思いは見事に通じる。竹内→小林→山野とつながったパックはコクドゴールを脅かすもゴールに近すぎる。一旦、チャンスがついえたかと思いきや、竹内がビハインド・サ・ネットからゴール右のフェイスオフサークルのエンド側まで上がってポイントの一に居た小林に振る。ここで小林が振りかぶる。
14:57 1試合挟んで確変継続!? G22←32←10
またもやミドルレンジからのシュートが決まる。見事にK1の右肩口をかすめ、目の前でゴールネットが揺れる。当然、応援席も「青く」揺れる。得意のPPをモノにし再び勝ち越す。今日のクレインズは違う。絶対にやってくれる。
17:48 C92 Crosschecking
それが証拠に、PKでピンチのはずなのに、コクドに2度もミスが出る。クリアパックがコクドのポジションミスでルーズとなってゴール前にフラフラと流れていく。K1が前に出て処理しようとしたが、諦め下がる。先に追いついたのは竹内だ。ここで決めれば相手に与えるダメージも大きい、のだが...。外してしまう。
直後には、自陣でパスカットした史郎がそのまま突進。DF一人を置いてきぼりにし山野と2−1隊形になる。充分に引きつけて山野にパスしようとした直前にパックが足元に近ずいてしまい、山野にパスが出た時点で山野とK1の距離が近く、既にK1の右足が待ち構えている状態。確かにPKだから決める必は無いと言えばその通りなのだが、完全なる数的優位の態勢であるなら「仕上げる」のがFWの役目なのでは?。というわけで、2ピリ終了。
Shots on Goal:C11、K10
前半のバタバタ振りは目を覆う惨状だったが、後半立て直し1点リード。これで初戦と同じになった。また、コクドにうっちゃられるのか?、それともクレインズが先に点を奪い2点差をつけられるか...。絶対にやってくれるはずだ。
(3)第3ピリオド
またもや同じスターター。立ち上がり、やはり敵陣で粘るチェッキングライン。しかし、いつものような継続ができず、パックを奪われると、あっさりと2−1隊形を作られてしまう。しかし、大澤は必死に戻り、ラストパスを受けようしたK30のスティックめがけてダイビング。辛うじてピンチを逃れると、今度は1つ目が攻めこむ。一旦ニュートラルゾーンにパックをクリアされたがすぐさま竹内がフォローすると、本部席ボード際まで回り込みブルーラインを越える。呼応したのは雅俊。絶妙なタイミングでパスが渡る。直後、会場はまたもや「青く」揺れる。
1:19 一瞬の閃光 G18←32
またもやミドルレンジからすかさず放ったシュートはK1の左肩口を綺麗に抜くファインゴール。ついに3ピリで2点差をつけた。でもまだ足りない。早く次ぎの1点を取って、コクドに諦めてもらわねばならない。すると、ここで余計な反則をしてくれるもんだから、たまらない。
4:39 K16 Unsportsmanlike Conduct
関係無いところでクレインズプレイヤーのユニフォームを引っぱったか?。
このPPこそ勝負時。ここが本当の勝負どころ。しかし、最初のフェイスオフを奪われるとコクドにもてあそばれ、パックを奪えない。ようやくパックを手にし、コクド陣内に入るも、さすがにK1。ここでの失点は致命的とばかりにゴール前に入り込んでくるクレインズFWより早くパックをフリーズされる。今日は、何故かミドルレンジから遠めのシュートばかりが決まっている。確かにファンネルでゴール前にパスを集め合わせに行くなり、リバウンドを叩くなりするのもわかるが、今日の得点経過を考えると、ゴールに寄っていくより、早い段階でDFに回し、ゴール前スクリーンという形でも良かったのでは?、と思う。しかし、パックがクリアされてしまうと、何故か自陣で4人のコクドにボックスを組まれる。それだけ、クレインズ各プレイヤーのパックへの集散が遅くなっていくかを象徴した反則が出てしまう。
6:09 C3 Holding
結局、パックを奪われ取り返せない苛立ちからなのか...。ここでトドメをさせなかったツケが回ってくる。なんてアイスホッケーの神様は気まぐれなのだろう。
6:32 何故? G34←18
4on4で簡単に自陣に入られるのはまだしも、そうなってしまったら、絶対にパックキャリアを潰さねばならないはずであり、それが駄目なら徹底的につきまとい、マークを外してはいけないはずなのに、ゴール裏を回られた時点で置いてけぼりを食らうと、ロブは先にフォークチェックを仕掛けるも交わされシュートを浴びる。既に態勢をくずしてしまったロブ。無情にもパックは逆サイドに出ている。あとは、2ピリ2点目を再びみせられたかのようにオープンネットにパックを打ち込まれる。
8:09 K18 Highsticking
しかし、まだ1点勝っている。3ピリ先に点を奪ったことが効いているのだ。だから、ここで突き放せばいいんだ。コクドがゴール前へズンズン切り込んで直接的にゴールを襲うという形で点を奪っているのなら、クレインズは全てが外からのシュート。このPPも確かにゴール前には切り込んでいっているのだが、コクドほどの力強さが感じられなず、K1に何なくフリーズされて「仕上がらない」。
結局、緊張した空気が持続しつつも、時間だけが刻々と過ぎていく。まさか、クレインズは1点差でこのまま逃げ切ろうと思っているんじゃないだろうな、と思った矢先に信じられない光景を目の当たりにしてしまう。
14:12 何故? G12←71
フェイスオフ後のパックをK12がゴール右から切り込む。原武がマークしていたがスティックは生きていた。倒されながらも放たれたシュートにコクドの執念が乗った形で、ロブも虚を突かれたかマタを抜かれてしまう。「またか〜」というような「溜息」が支配する。まだ負けたわけではないのに。そして、リングではうなだれる原武。このままじゃいかん。「うつむくな、前を向け、試合を投げるな」必死に叱咤激励するゴール裏。しかし、その励ましも空しく、これ以降、完全にクレインズの脚が止まる。目の前で黄色いユニフォームが踊る。クレインズなすすべなし。まだ負けたわけじゃないのに!。
結局、残り5分、コクドの攻めを耐えることしかできなかったクレインズ。
Shots on Goal:C7、K9
(4)1st OVER TIME
立ち上がりから3ピリ終盤の勢いそのままにコクドの攻めが延々と続く。チェッキングライン仕事師、中村、辻を1、2、3つ目に組み込むスクランブル出動。しかし、コクドの脚は衰えず、クレインズはコクドのミス待ちでアウトサイドに逃れるのが精一杯。
8分過ぎに一本シュートを放ったところから、12分過ぎはクレインズが敵陣に攻め込みパックをつなぐも岩崎を脅かすまでの分厚い攻めができない、コクドDFも潰しが早い。自由に動けない。
見せ場といえば、14分過ぎに史郎が単独でゴール左からゴール前へ切り込んだ程度。
また、終盤までコクドにパックを握られる。しかし、クレインズも敵陣に放り込むと、コクドもさすがにきついのか、アイシングで脱げる回数が増える。
結局、クレインズが凌ぎ切った形でタイムアップ。
Shots on Goal:C6、K12
オーバータイムは反則が一切無かった。しかし、3ピリのレギュレーションの状態なら取っていてもおかしくないプレーが全て流されている。何度もクレインズのプレイヤーが競り合いで倒されるシーンを見せられるが、ことごとく反則にならない。これがプレーオフなのだ。アイスホッケーが本来あるべき姿であるイーブンの状態こそで技や力を競うのだから、反則に頼ってはいけないのだ。そもそも、3ピリまでに数多くのPPが転がり込んで来たのに、そこで決められなかったから、こうなってしまったのだ。責任は審判には無い。自分自身にあるのだ。
(5)2nd OVER TIME
今度は、クレインズが攻勢に出る。面白いようにニュートラルゾーンを抜けてくる。いままでとは違う見違えるクレインズの動きは何なのか?。
1分過ぎ、自陣から匡史がようやく自慢の脚でニュートラルゾーンを割ってくる。ゴール右45度からシュート。リバウンドが左サイドに出ている。そこには竹内が飛び込む。しかし、パックがブレードを嫌う。
直後には外から賢吾が放ったシュートをゴール前で雅俊が合わせる。パックは雅俊のブレードに当たったが、さすがにK1。マタを素早く閉じ、ゴールを許さず。
2分過ぎ、今度は山野が右45度からシュートを放つも正面。そう何度も何度も肩口に行くものでもない。
4分過ぎ、1つ目がコクドのお株を奪う波状攻撃を見せ、ゴールを襲う。スクリーンの状態を作り、ゴール右のポイントの位置から竹内が強烈なシュートを放つ。リバウンドが出るが叩けない。だが、パックはまだクレインズが支配。すぐさまゴール正面のブルーラインにパックが戻るとまたもや回り込んだ竹内がシュート。しかし、K1の正面。
何故、急にクレインズの攻めが際立ってきたのか?。前のオーバータイムの終盤、コクドの脚も止まりかけたことと関係があるのか、コクドは敢えてポジションを低くし、ゴール前を固め、溜まった疲労を一時的に解消させようとしているのか、それまで反則スレスレというかほとんど反則という当たりが影をひそめる。当然、クレインズにチャンスが何度も生まれ、シュートも数多く打てる。しかし、しかし、まさか、それはトラップなのではあるまいか?。クレインズに攻めさせ、攻めに熱中するあまりDFが入り込んでくれるのを待っているのか。戻りが遅いことは解っているから、カウンターを決めればクレインズプレイヤーがついてこれず数的優位を得られるというトラップなのでは?。まず、コクドの当たりが少なくなったことがおかしい。だとすると、クレインズは既にコクドの手の平で遊ばれていたということか?。まさか、そんなことにはならないよな、と思った8分近く。コクドが久々にカウンターを仕掛けてきた。放り込んで競り合いとなる。しかし、ここでコクドが牙を向いてきた。コクドベンチ前ボード際でコクド、クレインズ双方のプレイヤーがしのぎを削る激しいパックの奪い合い。しかし、1対1の競り合いは絶対に負けてはいけないのだ。それが自陣ならなおさらなのだ。しかし、パックは本部席側に流れていく。ゴール左手前でそのパックの流れは止まった。
8:06 一瞬のスキを突かれる G16←18←34
最後は十條、クレインズの前に14年も立ちはだかってきた男に決められた。
Shots on Goal:C6、K2
今日のクレインズの敗戦を「経験の差」と一言で済ませてしまった某お偉い人に言いたい。「ならば、クレインズは今後20年優勝できないのか?」と。そうではないだろう。「経験の差」を言い出したら、クレインズが日本リーグで試合して、優勝を目指すこと自体に意味が無いではないか?。違う、この敗戦は「経験の差」なんかじゃない。「勝利への執念、それもただの執念ではない。どうしても勝たなければならない試合に対する勝利への執念が足りなかった」としか言いようがない。そして、タイトなスケジュールの中でもプレイヤー各人のパフォーマンスを最大限発揮できてなかったことも考えられる(少なくてもコクドと比較して)。今年1月の全日本選手権の準決勝が良い例だ。「どうしても勝たねばならない試合」にクレインズはことごとく負けているではないか。
この2戦でクレインズは「普段着ホッケー」で3点、5点とレギュラーリーグなら勝ってもおかしくない得点を挙げながらもコクドに負けてしまった。引き離しても引き離してもひたすら食いついて離さないコクドの試合運び、延長戦になっても運動量が落ちないプレイヤーの潜在能力。コクドはレギュラーリーグとは全く違う「よそ行きのホッケー」を見せた。勝利と敗戦の違いはそこらへんにあると思う。クレインズは攻撃面では「普段着ホッケー」をやったかもしれないが、それだけでは勝てないということがはっきりした。表向きは「普段着」でも「中身は勝負下着」をまとわねばプレーオフは絶対に勝てない。OVER TIMEのところでも触れたが、当たり負け競り負けで転倒するようではいけない。確かに反則ではあるが、反則にも屈しない強固な肉体と精神力がそれを補うのではないだろうか。ただ、クレインズは全力ホッケーが売りで、そこに惹かれるファンも多いことは事実。「ここ一番だけ勝てば良い」という試合は、クレインズのチームカラーには合わないし、そんな試合をするクレインズを誰も見たくない。だからこそ、日本リーグのような長期戦でも全日本のような短期決戦でも勝てる強さを求めているのだ(理想を追い求めすぎかもしれないが)。
誤解しないでほしいのだが、別にクレインズに同じ事をやれとは言わない。あくまで例として挙げるまでだ。
・引木監督時代の王子の陸トレの中に、「ただ延々とグラウンドを何周も走る」というのがある。それは、引木監督が「やめ」と言われるまで走りつづけなければならない。いつ終わるのか解らない。ペース配分なんぞ意味のないものになる(某雑誌より)。
・相撲の双子山部屋の稽古はすさまじい。何度も何度も稽古場で相撲を取らせる。クタクタになっても相撲を取らせる。疲労困憊の状態でもきちんと体が動くかという稽古は、頭で考えるよりも体が勝手に相撲を取るようになるという。これは、勝負を決する取り組みの中で生かされる(某TV番組より)。
同じような事はやっているとは思うが、一時代を築いたチームはそれなりに努力している。勿論、クレインズの努力が足りなかったとは思わない。しかし、結果として負けたということは、足りないものがあるということしかない。結果が全てなのだから。
それにしても残念だ。これだけ魅力的なアイスホッケーを見せてくれるようになったのに、もう今季はその試合が観られないなんて...。