第71回 全日本選手権第4日準決勝第2試合
2月14日(土)王子製紙VS日本製紙クレインズ 観戦記
(札幌・月寒体育館)
(0)プロローグ
勝てば平成2年以来となる決勝進出が決まる(当時は十條製紙だったが)。その14年前の相手はコクド。既に準決勝の第一試合でコクドが決勝進出を決めている。「コクドを倒してタイトル奪取!」。十條製紙、そしてクレインズになってもついてまわる「宿命」なのだ。そのためにも、目の前の敵、王子を倒さないことには同じ土俵にすら立てない。見ているこっちだって明日12:00開始と15:00開始とでは大きな違いだ。ここ数年、「最終日は早起き」が続いているだけに、是が非でも勝ってほしいのだ。タイトルを獲るというよりも、「コクドを倒すために」。
【クレインズ】
30−41
32−20−18−33−23
10−47−21−7−34
8−19−14−22−72
13−27−2−77−44
やはりライアンは昨日の試合で負傷したようで欠場となった。せっかく中島谷が戻ってきたと思った矢先のこと。それ以上に「決めるべき人」が欠けてしまったクレインズにとっては大きなネガティヴファクターだ。代わりに酒井が入る。昨日、スコアリングチャンスで2度のシュートミスを犯した酒井。しかし、ここで結果を出せば「先々」につながる。
(辻、史郎、岸部、勇、任田は出場無し)
【王子】(ホーム)
70−30
17−22−19−33−8
9−24−21−44−6
7−20−3−28−37
10−16−18−11−2
もはや王子は勝てない相手では無い。しかし、絶対勝てるという相手でも無い。ニュートラルゾーンを突っ切るタテパス、そして、ゴール前で見せる瞬間的なスピードから相手の守りを崩しにかかる攻めを許してはいけない。それでなくても攻撃の起点となる自陣おけるDFの球出しも含め、全体的なプレーの流れにスピードが無いことは否めない。私に言わせれば去年、いや一昨年から徐々にそのスピードが落ちてきている。それができないままここまで来てしまっているし、アジアリーグも勝ってしまっている。それが全てではないにせよ、昔のクレインズに比べてプレーにテンポの良さが感じられなくなったのは事実。簡単に修正できないとは思うが、それでも「勝ってほしい」のだ。
レフェリー:川村
ラインズマン:川合、市川
(1)第1ピリオド
クレインズの1つ目に対し、王子は2つ目をマッチアップ。クレインズの2つ目には王子の1つ目がマッチアアップ。どっちが当たってもあんまり変わらないような気がするが...。
それが証拠に、立ち上がりから双方ともスピードに欠ける展開が続く。お互い敵陣には入れるのだが、スドット周辺やゴール周辺での守りは双方共にきっちりお固めており、決定的なスコアリングチャンスが訪れないまま5分が過ぎる。
6分、竹内はニュートラルゾーンで自陣からの良い球出しを受け1on1ながらも王子ゴールに突進。しかし、シュートは070の正面。
10分、自陣でパックを奪われピンチを招くも、次郎のナイスセーブから早いトランジッションで3on2隊形。パックキャリアだったジョーが右サイドから持ち込みそのままゴールに向かって強烈なシュートを浴びせ、O70を後方にグラつかせるも、ここは膝下でしっかりセーブ。
膠着状態が続くかに思えたが、15分を過ぎたりから、王子のクレインズ陣内での攻めが長くなり始める。そんなに早く、脚が止まるもんなのか?。それでも相手のパスミスからジョーがパックを奪い、これまた1onで攻めあがり、右サイドから強烈なシュートを浴びせ、O70の態勢を崩したが、その後が続かず。
15分、これまで王子の攻めに互角に渡り合っていたクレインズだったが、O20に自陣からの持ち上がりにブルーライン際で見事に中央突破を許す、しかし、ここな次郎が横転しながらもセイーズ。
明らかに、クレインズの脚が止まり始めている。そのせいか、王子にズカズカとクレインズ陣内に入っていき、早く同点に追いつきたい気持ちが伺える。それが17分に実ってしまう。相変わらずパックキャリアと一緒に下がっていくDFの挙動は変わらず、最終的にシュートまで持っていかれるところを、まだ踏ん張っている感じはするが...。
Shots on Goal:C5、015
中盤から終盤にかけてクレインズは王子の早い出足と早いトランジッションから何度かクレインズ選手が動けなくなることしばしば。今日も「次郎任せ」の試合となってしまうのか?。そんな試合は長くは続かないことをFW陣は理解しているのだろうか?。
(2)第2ピリオド
1分、明らかにクレインズのDFが自陣でお機能を失いかけている。ニュートラルゾーンで考えられないパスミスを犯し、03に拾われシュートまで持っていかれる。
3分、王子のラップアラウンドに全く対応できないクレインズDF。問題はラップアラウンド後にゴール前の右ないし左のスロットまでの持ち上がりを許してしまっている点が気に入らない。
6分、遂にクレインズは自陣で防戦一方に立たされる。パックへの早い集散を見せる王子が明らかに優位に立ち始めている。コーナーでの競り合い、ボード際での競り合いに負ける以前に早いパック処理で止められないまま、最後はコーナーから出たパスを021が拾い、ゴール右から左に素早く移動し、DFとクレインズの裏をかいたプレーなのか?。
6:43 獲られるべくして獲られたゴール G21←9←24
動けない理由でもあるのか?。コーナーで競り負け、素早くゴール前右に位置していた川平が逆サイドに固まている中、タイミングを外しつつ、ゴール前までの寄りを許してしまい、スロットからシュートを浴びている。
おかげでクレインズの攻めはなりを潜め、パックが王子陣内にほとんど来なくなってしまった。ようやくパックを奪い責めあがろうとするも、王子の高めの早めのチェックでパスコースを消されている。一旦、自陣に戻って組み立てようとするも、早いチェックでパックキャリアに対するサポ^−トが遅く、分厚い攻撃につながっていかない。
しかし、16分。ちょっとした接触プレーから流れが変わる。敵陣に放り込んだパックに飛び込んでいくも王子が先に追いつき、ゴール裏に流そうとした矢先のパスでダーシが転倒。たまたま出ていたスティックに綺麗に引っ掛かる。
16:17 O21 Tripping
本日最初のPP。30秒後に早いパス回しからバックドアパスが飛び込んできたジョー。既に完全に逆サイドに振られ、オープンネット状態にも関わらず、右サイドからのシュートは枠の上を越えていく。絶好のチャンスを潰したかに見えたが、17分にパワープレーから見事なゴールが決まり、ようやく試合らしくなってきた。
17:47 まずは同点に追いつく G47←20←7
ブルーライン中央にジョー。左サイドベンチ側のスロットの位置にダーシ。その正逆方向に樺山が陣取っている。まず、ジョーがシュートと見せかけて左手前に居るダーシへパス、すぐさま振りかぶるも、実は功名なトラップパス。レシーブしたダーシがワンタイムでゴール前のスロットにフリーで居た樺山に渡ると、態勢を崩しながらもシュート。完全にO70を交わしたかに思えたが、そこは素早い反応を見せ横滑りでゴールライン上で倒れこみながらも抑えられたかと思ったが、倒れこむほんの一瞬早くゴールが決まっていたようだ。
ここまでずっと、王子のプレスに屈し、まともにアイスホケッケーをやれていないクレインズが、このピリオドの終盤だけはパックうを持ったらまずゴールを狙うシュート、という動きに一瞬だけ変わった気がする。それが同点弾の2分後に典型的なパターンで実現させてくれた。
19:45 シュート&リバウンド 簡単でいいじゃないのよ G34←47←8
時間もないから敵陣に入ってシュートを放って、っていう感じだったかも知れないが、それが結果的にはいい結果を生み出した。ベンチ側ブルーライン際で太郎が思い切って振りかぶったシュートはO70の足元に向って飛んでいく。おそらくゴール前に入っていた樺山に当たり角度が変わって逆サイドにリバウンドのような格好でパックが出たところに、詰めていた原武がDFに絡まれながらも押し込み逆転に成功!。喜びの輪の中でまるで「雄叫び」を上げているかのように喜ぶ原武の姿が印象的だった。
Shots on Goal:C10、O12
15分までは完全に王子のペース。しかし、PPをもらいしかも鮮やかに決まったことが、クレインズに失いかけていた「積極性」を呼び起こし、それが終了間際の貴重な逆転ゴールにつながった。ただ、試合そのものは王子が支配している。このまま逃げ切れるとは到底思えない。勝つためには「逃げ切って」しまえばいいのだろうが、そんなに簡単に勝たせてくれる相手では無い。ましてや、王子の方がパックへの集散が早く攻めも守りもスピーディーであることは誰の目にも明らか。しかし、逆転したことは事実なのだ。3ピリは厳しい20分になりそうだ、と腹をくくったのは私だけでは無いはずだ。
(3)第3ピリオド
って、腹をくくったのに、なにもその通りにすることはないでしょうに。
1:36 ニュートラルゾーンでパックを奪われる G33
これじゃあ次郎が可哀想。球出しにモタモタしてるから突っ突かれてしまう。半ノーマークのまま突進。必死に反則承知(ディレイドコーリングオブペナルティになっていた)で背後から抑えに行くも、先読みした次郎が態勢を右に傾けてしまった。O33は右サイド(攻撃視点)から攻めあがりフェイントを入れるつもりだったのだろう。ところが、背後からジョー(だったと思うが)が押さえに行ったために身動きが取れないままゴールに向って一直線。パックもそのまま一直線。先読みした次郎が「一直線」のラインを開けてしまい、O33はパックを叩くことなくパックもろともゴールに入ってしまう。
どうして悪い意味で「期待に応えてくれる」のかクレインズというチームは。
その後、試合は一転して膠着状態。王子の攻めもそれほどきつくはなく、しかし、クレインズのそれと比べるとやはり王子の攻めの方が一枚上手。スコアリングチャンスになりそうなパックのつなぎをクレインズ陣内で展開。さすがに、ここはDF陣が踏ん張り決定的な場面こそ阻止するも、対するクレインズの攻めは自陣からのロングパスで一気に形勢逆転を狙うプレーが目立つ。
このまま延長戦になるのか、と思われた11分。博史と太郎が自陣での王子の攻めを凌ぎ、早いトランジッションから敵陣に入っていこうとした矢先に二の矢として入って行こうとした匡史が転倒。
11:15 O20 Interference
敵陣でのフェイスオフを樺山が奪うと、ベンチサイドポイントの位置に居たフォスターにパス。樺山はゴール裏に下がり、フォスターがにじり寄り、逆サイドへのパスを狙いつつも、一旦樺山へパス。樺山も逆サイドのダーシに出そうかと思わせつつフォスターへリターンパス。すると、そのパスに狙いを定めていたフォスターが自身の長いリーチを生かし、おおよそ届かないであろうパスコースにブレードがドンピシャのタイミングで「ぶち当たった」瞬間に...。
11:32 豪快! 勝ち越しのPPゴール G33←47
幾分前に出ていたO70をあざ笑うかのように、フォスターに正対していた遥か右(GK視点)にパックは軌跡を描き、ネットに突き刺さったのだ。ここまで王子に押されていながら、2度のPPをモノにし再びリードを奪った。
12:40 C23 Roughing
しかし、そう簡単には勝たせてくれない。O22が不充分な態勢から鋭いシュートを放ち勝利への執念を見せると、逆サイドでのボード際の競り合いでも気合を見せパックを奪おうと必死のプレーがヒデの反則を誘った。
だが、ここからは次郎の独壇場。王子のボックスが小さくなり守りがゴール前に固まってきた中でも冷静にシュートを見極めブロック。ゴール前に切り込まれ、リバウンドを出しても、それを叩きに行った王子のシュートミスにも助けられ厳しい2分間を守り切る。
しかし、残り5分。1点を巡る攻防は見ごたえがあった。王子も攻めてはいるが、次郎のブロックとクレインズの早いリバウンド処理に厚みのある攻撃に以降できない。クレインズも駄目押し点を奪おうと攻めあがろうとするも王子の必死の抵抗に合う。気がつくと残り2分。
17:55 O Timeout
クレインズ陣内でのフェイスオフだったが、まずクレインズがパックを奪う。しかし、そこに突っ込む王子のFWに屈しパックを取られる。しかし、ここで踏ん張ったのがクレインズの守り。マークは外さず王子に有効な攻めをさせない。打たれるシュートも外からのもので、早めにパックをクリアし、簡単には六人攻撃をさせなかった。しかし、3度目に王子がパックを放り込んだ時点で、
18:43 王子六人攻撃敢行
必死に凌ぐクレインズ。とてもじゃないがエンプティネットなんぞ狙える余裕も無いほど、王子の圧力にパックをニュートラルゾーンに出すのが精一杯。ただ、パックを奪っても大きくクリアせずにアイシングを避けるよう気を使い、なおかつ時間も確実に減らしていった点は見逃せない。
結局、1点差を守り切り決勝進出を決めた。
Shots on Goal:C7、O15
シュート数をみても一目瞭然だが、試合は終始王子ペースだったことは間違い無い。しかし、クレインズが数少ないチャンスをモノにした結果勝利した。ただ、王子は負けた気がしないだろう。パック支配率、集散の速さは明らかに王子が上回っていた。
こんな試合をやってしまってはコクドにはまず勝てないだろう。フルストレングスでは1−2で負けているということを肝に銘じて欲しい。コクドは王子以上に守りをきっちり固めてくるハズだし、「ここ一番」という試合には「必ず結果を出してきたチーム」。しかし、ここで勝たずしていつ勝つのか?。何度も何度も全日本でコクドに負けるのはいい加減止めようじゃないか!。コクドを倒さずして日本一なんぞ有りえない。
直接対決で勝って掴む栄冠にこそ価値があるのだ。なりふり構わず全力で戦え。そして、今年2回目の胴上げをやってくれ。
14年前の雪辱を今こそ晴らそうぞ!
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