アジアリーグアイスホッケー 2003〜2004
1月18日(日)日光アイスバックスVS日本製紙クレインズ(4回戦) 観戦記
(日光霧降アイスアリーナ)

(0)プロローグ
 勝てば「優勝」である。海の向こうのコクドの結果に関わらず、である。相手は既に最下位が決まっているバックス。普通に戦えば負けない相手。しかし、勝負は何が起こるかわからない。試合の流れさえ掴めれば問題無いだろう。しかし、そこに至るまでに時間を要するようでは足元をすくわれる。せっかく転がり込んできた自力優勝のチャンス。そして、チーム初のメジャータイトル獲得となる大事な試合。久々に霧降アイスアリーナの西側の端がクレインズファンで埋まった(ここのところ関東でばかり会っているX氏が急遽参戦、無事に「はまなす」に乗れたのかしらん。それよりも一○離散の方が心配...ぉぃ!)。私も、「浮かれていると足元をすくわれる」と言っておきながら、今市市のホームセンターで紙テープと模造紙とマジックペンを買っている自分が居た。勝ち試合を観に日光まで来たのだ。勝てば優勝なんだから、それなりの準備をするのは当然だ、と言い聞かせながらも、どこかで「優勝まであと一歩という所まで来ておきながら、大事な試合で負けてしまう」。そんなクレインズを引きずっている。複雑な心境のままリンクに乗り込む。選手は優勝を意識して固くなっていないだろうか?。食い入るように試合前の練習を凝視している私自身こそが一番固くなっている(笑)。

【クレインズ】
30−41
18−20−32−23−22
10−47−71−34−7
8−19−14−77−2
24−27−13
メンバーは昨日と変わらず。

【バックス】
42−37
32−9−18−24−34
74−16−14−3−8
41−21−15−19
10− −11

レフェリー:川村
ラインズマン:赤坂、椎谷

(1)第1ピリオド
昨日
の試合開始直後のマッチアップは、クレインズ1つ目に対し、バックスは2つ目。クレインズ2つ目にはバックスの1つ目が対峙していたが、今日は1つ目同志、2つ目同志がぶつかる。
今日は昨日とはうって変わったスピードのある動きを両チームが見せる。開始早々に双方共に1本ずつシュートを放ち合うも、やはりパック支配力はクレインズが上。ただ、バックスの自陣での守りでは、パックキャリアへのしつこいマークが功を奏し、昨日、クレインズが試合中盤から終盤に見せた「敵陣での連続攻撃」をしっかり潰しており、クレインズにスコアリングチャンスはなかなか訪れない。
逆に、バックスは自陣でしっかり守り、クレインズの最終ラインの裏にパックを出し、昨日も何度か見せていたボード際をウィングが抜けていく攻めからチャンスを作る。
 4分過ぎには、ボード際を抜けクレインズ陣内のゴール左コーナーまで入り込み、ゴール前へセンタリング。これにバックスが突っ込みシュートを放つが、ここは次郎が判断良く前に出てブロック。失点を免れる。攻め込んでくるパックキャリアに対して、クレインズDFが距離を開けすぎているように見えるのは私だけか。まぁ、潰しに行ったところで、パスを出されてしまうと相手により優位な態勢を与えてしまうことも充分に考えられるのだが、だからといって、エンドボード付近まで入り込まれ、センタリングまで出させてしまうのはいかがなものか?。
 その数十秒後には、敵陣でパックを奪われ、B32に半ノーマークを取られるピンチを招くも、次郎の好セーブでここも失点を免れている。
 しかし、5分後半、1つ目が敵陣でパックをつなぎ粘りを見せる。バックスDFに手を焼きながらも、一旦、ポイントの位置に居た小林にパックを戻し、シュートを放つもそれが枠を逸れる。またもチャンスついえたかと思われた直後、そのパックを雅俊が拾う。ゴール右のコーナーあたりで入ってきたダーシと態勢を入れ替えるようにパスをつなぐ。そのまま、ゴールライン沿いにバックスゴールへ突進していくダーシ。

 
6:02 優勝を賭けた試合の貴重な先制点 G20←18

ゴール右(攻撃視点)から得意のゴール左まで移動し、シュートを放つかに見えたが、ゴール右手前の位置から、バックハンドでパックを放り上げるように浮かせる。そのパックがB42のグラブサイド肩口を抜いていた技ありゴール。
その後、2点目、3点目がトントンと決まると試合は楽になるのだが、世の中そんなに甘くない。
直後、自陣で氷上に膝を着き動けなくなっているクレインズのプレイヤーが一人佇む。樺山だ。自力では立てない。膝を痛めたか、両肩を抱えられベンチに戻る。2つ目のセンターが消える。非常事態か?、と思われたが、5分後、復活してくるところは、大事な試合に賭ける「男気」を感じさせてくれる。その間は史郎が2つ目のセンターに入り事無きを得る。

その後は、クレインズが敵陣に入るもバックスの踏ん張りで攻撃は長続きせず、逆にカウンターを取られ、それがことごとくゴールを脅かすプレーに発展してしまう。
9分過ぎには、バックスが自陣からのタマ出しでニュートラルゾーンから2−1隊形となるも、ここはDFが懸命に戻りカット。
10分半には、自陣でパックを奪われ、B32にラップアラウンドを喰らうと、バックスプレイヤーへのマークがことごとく遅れ、最後は正面スロットからシュートを浴びるも、次郎が転倒しながらもブロック。しかし、リバウンドが出てしまい、一瞬ヒヤリとさせるが、ここはクレインズが先にクリア。

クレインズも11分、13分にダーシと竹内による2−1、辻と飯塚に中央からオーバーラップしてきた原武による3−2で、いずれも攻め込む。しかし、ラストシュートがいずれも枠から外しチャンスを潰す。

逆に、15分にはB9からのタテパスでB32が抜けると背後にクレインズDF2人を引き連れゴールに突進。次郎がナイスセーブを見せ失点を免れる。

 16:06 B18 Holding

せっかくもらったPPチャンスだが、17分にB9にカウンターでノーマークを食らうなど、有効な攻めが出来ずじまい。昨日、見事に決まった、ブルーライン中央にジョー。ゴール右(攻撃視点)に樺山の2人が起点となる攻めもゴール前をしっかり固めリバウンドの処理に気を使っていたバックスの守りの前に屈し追加点を挙げられない。

Shots on Goal:C7、B6

ここまで、1点は先制しているものの、ヒヤリとさせる場面が多いのはバックスの方。決してクレインズにスピードが無い訳ではないのだが、守りに入ったときのプレーに思い切りが無いように感じたのは私だけだろうか?。優勝を意識して安全策を取っているつもりが、実は消極的な動きとなり、バックスにゴール前に何度もパックを集められているのではないのだろうか?。2ピリが心配である。

(2)第2ピリオド
開始早々に竹内のタテパスが敵陣ブルーライン手前にまで走りこんでいたダーシにつながり、その時点でパーサイドの雅俊との2−1。何でも出来た局面だが、早めにダーシから雅俊にパスするも、シュートを綺麗にキャッチされる。

 2:19 B34 Hooking

ニュートラルゾーンでバックスがパックをこぼし、そこに走りこんできた太郎が突進。ノーマークになるかと思われた直後転倒。
今日2度目のPPは、手数は出ているものの、決定力に乏しい内容。惜しかったのは、ブルーライン中央の竹内からゴール右スロットの大澤へパス。中央の密集の中を通し、逆サイドに居た由宇にパス。これが見事に通り、綺麗にバックドアが決まる、と思いきやラストシュートは枠の外...。

チャンスを潰すと、その報いは必ずやってくる。
自陣に攻め込まれるも、コーナーあたりでのマークが甘く、ルーズになりかけたパックを継続されると、ベンチサイドボード際からゴール前へのセンタリングを出したB16。しかし、そのパックの角度が何故か変わっているではないか。

 
6:15 言葉もない G16

ゴール前でクレインズDFに当たり角度が変わったか、次郎が構えていた位置よりも右にパックが流れていくとゴールイン。ハードラックと一言で済ませるのは簡単だが、その前にピンチを未然に防ぐすべが全く無かったとは言わせない。
この1点でクレインズはようやく激しさをむき出しにしたプレーを見せてくれる(遅いちゅーねん)。2つ目が出てきたが、ライアンを中心に攻め込むも、パックがことごとく足元に固まり、効果的なシュートが放てない。7分過ぎにも、太郎→匡史→博史と(ボード際→ゴール右→ゴール左)パックが綺麗につながりシュート。しかし、パックはこれまた枠の外。嫌な流れになりそうな8分過ぎ。1つ目のFW3人がバックス陣内、本部席側ボード際を見事な連携でパックをつなぐ。1度シュートチャンスはあったものの、今日は決まらない雅俊。ならば、アシストに回るべく、ビハインドザネッツの位置からゴール右スロットに入ってきた竹内にパスが綺麗に通る。シュートコースにはバックスDFが2人、ゴール前を固めていたが、委細構わず、ほんの一瞬、敵のゴール前の状況を見極めリストシュート。

 
8:23 失点直後の貴重な勝ち越し点 G32←18←20

綺麗にネットを揺らし勝ち越すとともに、嫌な雰囲気を一層するかと思われほどクレインズにチャンスが転がり込む。
 10分過ぎ、1つ目が敵陣で連続攻撃から、竹内のシュートフェイント、雅俊ラップアラウンド&そのリバウンドを足元&クリアパックを再びラップアラウンドでゴール左脇を割ろうとするも決まらない。
 11分過ぎ、今度は2つ目が樺山とライアンの見事なコンビネーションでバックスDFを翻弄。そこに山野の運動量が加わり、バックスDFは棒立ち状態。あまりの見事なパス回しに、既に動いていたゴールに気づかず、半ば見とれていたようなレフェリー(苦笑)。
このチャンスを逃すと、12分にはバックスが2度に渡りクレインズゴールを脅かし、次郎を転倒させ見せ場を作るも、出てきたリバウンドを叩けない位置にプレイヤーが入っていたり、スロットの外に出てしまったパックをカバーすべきDFが居らず、いずれも転倒してしまった次郎にシュートを浴びせるも、次郎が懸命のセーブで切り抜ける。
勝ち越したものの、このままではどっちに試合は転ぶかわからない。そんな14分過ぎ、バックス陣内で粘り、太郎がパックを奪うもフォローできるプレイヤーが間に合わず、辛うじてブルーライン手前で飛び込んできた匡史が本部席側フェイスオフサークスやや外側で拾う。そのままシュートを放つ。B42、ブレードに当てて難なくクリア、かと思われたが...。

 
14:51 運も味方しているか G14←8

匡史が放ったシュートはハーフスピード。それをスティックのブレードに当てクリア。されたかに思われたパックがなんとゴール左スミに転がっている。優勝を狙うチームには「運」も味方してくれるのか?。大事な大事な追加点が入りクレインズがますます有利になっていく。後は余計な反則さえしなければ...、と思った矢先、匡史がチェッキングフロムビハインド気味に激しいチェックをかます。ちぇっくされたB15が怒ると小競り合い。そこに加勢してきた太郎に今度は瀬口が小競り合いに応戦。結局、

 18:26 C14、C8、B3、B15 いずれもRoughing(Double)

匡史のチェックはチェッキングフロムビハインドを取られてもおかしくないプレー。ちょっとレフェリーの裁定が甘かったのでは?。

Shots on Goal:C11、B6

3ピリ、変に守りに入らなければまず勝てる。用意してきた「クレインズ祝勝グッズ」製作にとりかかろうとしたが、カミさんに「まだわからないから」と止められた。そうだ、それは自分でもそう思ってるんじゃないか?。でも、そのことで優勝することを否定しているような自分も嫌だった。でも、時間はまだある。残り5分もあれば製作は可能だろう。ここはこらえて勝負の3ピリを待った。

(3)第3ピリオド
ところがクレインズは簡単に優勝できないらしい。
3ピリ立ち上がりからバックスが立て続けに
クレインズ陣内に入って連続攻撃に持っていく。何故か出足が止まっているクレインズ。「おい、どーした?、優勝を目の前にして固くなっているのか?」と思わせるほど、バックスに好き放題やられている。極めつけは2分過ぎ、コーナーの競り合いに負け、ゴール前に絶好のセンタリングが出る。そこにB34がナイスタイミングで入りシュート。「やられた」と思ったところに次郎が素晴らしい反応でそのシュートをセーブ。こんな大事なところで「次郎任せ」に頼むようじゃ先が思いやられる。
クレインズも3分過ぎには、ロングパスが綺麗に通りダーシがノーマーク。ゴール右からシュートフェイクを入れB42の態勢を崩し完全に転ばせる。あとは左へ振ってパックを隙間に流し込めば良いのだが、流し込んだパックがうつ伏せエビそりに寝転んだB42のレガースの下に入り込みゴールを割れない。

すると、またもやバックスの猛攻にクレインズはサンドバック状態。
4分過ぎ、タテパスから中央を抜かれシュート。リバウンドが出るも処理しきれずベンチ側ブルーラインあたりまで流れていく。そこを叩かれるとパックはゴールポスト右上角を直撃する。
5分過ぎ、カウンターから最後はB21がスピードを生かした見事なシュートを放つも次郎が懸命にグラブを出しキャッチ。
6分過ぎ、原武が自陣でエッジをギャップに引っ掛け転倒。その間にゴール前へセンタリング。一旦は次郎がブロックするも、リバウンドを叩かれる。それも次郎の正面に飛んでくれたので事無きを得たが...。

3ピリに入って、クレインズの攻めが単調、単発になり、バックスの攻めに連続性が出てきた。このままではやられる。いつかやられる...。

しかし、アイスホッケーの神様も今回だけはクレインズに微笑んでくれている、としか思えないようなプレーが飛び出す。
7分過ぎ、敵陣でのフェイスオフ。博史が取って、すぐさまポイントの位置に居た勇に渡るとゴール前へ軽く流したようなシュート(なのか、本当に?)を放つ。難なくブロックされると思ったパックが、

 
7:19 貴重な追加点はまたもや運も味方したか? G77←19

ゴール前でわずかにバウンドが変わったか、それともバックスDFの脚に当たったか、いずれにせよ、何かに当りバウンドしつつも、ゴール左に吸い込まれていた。
「勝つときってあっさりゴールって決まるよな、確か...」。これは、もうクレインズのものか?、と思わせておいて、

 7:49 C20 Boarding

キルプレーになる。しかし、ここを守りきればまず大丈夫だろう、という勝手な感触を持った。それぐらい、この勇のゴールは効果があったから。
それを証明するかのように、8分過ぎにはバックスがタマ出しでミスをし、クレインズが2−0隊形。山野がゴール左サイドから狙うかに見せてギリギリまでひきつけ逆サイドのライアンにパス。「もらった」と思いきやパックは枠を外していた。「おぃ!」って言っちまったよ。

PK終了間際の、コーナーに居たB9からのセンタリングにB32が正面で合わせたプレーは完全に1点もんだったが、これも次郎が鋭い反応を見せ、ナイスセーブ。3ピリは次郎に救われた。

その後、15分過ぎまで膠着状態が続く。バックスも序盤ほどの攻めの勢いは無く、クレインズも敵陣には行くものの、肝心なところでパスが通らずチャンスを潰す。

いてもたってもいられなくなった私は最前列で観ていた自席を離れ、クレインズ応援席の上に駆け上がると、来るべき場面に備え、買ってきた模造紙を広げ、マジックを引っ張り出す。X氏にお手伝い頂き、バタバタしながらもポスターカラー式でインクがなかなか出ないペンを駆使し、殆ど殴り書きでボードを作り上げる。すぐさま、紙テープを取り出し再び最前列に戻る。既にカウントダウンが始まっている。幸か不幸か、この間、大きなプレーが無かったことがせめてもの救いか。もう、リンクはクレインズの優勝に向け刻々と時をきざむだけになっていた。

ふと気がつくと手にしていた紙テープを思いっきり投げ込んでいた。と同時に自分の頭上からたくさんの紙テープが飛んできた。あっという間に最前列は色とりどりの紙テープの波で埋め尽くされた。もっと太いマジックを用意すりゃ良かったよ、と思いつつも、汚ねえ字で書いた模造紙を必死に広げる。見えただろうか、あんな細い字で、いやきっと見えなかったろうな。でも、いいや、優勝できたんだから。


一週間前には「もう見ることが出来ない」と諦めかけていたこの場面。観られたことに素直に幸せを感じている。そして、この場面を見せてくれた日本製紙クレインズに素直に敬意を表したい。

Shots on Goal:C10、B10

他のチームは何度もこんなことやってるんだ。いままで出来なかった分、この先まとめてやったってかまわねぇんだぜ!。2月にも3月にもやろうぜ!。遠慮するこたぁねぇんだ!

前に戻る